「脳って、物理的な大きさは変わらへんのに、なんで新しいことをどんどん覚えられるん?」
こう疑問に思ったことはありませんか?
スマホの容量はすぐいっぱいになるのに、脳は歳を重ねても“容量不足”になりません。
これ、よく考えると不思議です。でも、脳の仕組みを知っていると、めちゃくちゃ納得できるんです。
結論からいうと:
脳は「データを保存」しているんじゃなくて、「つながり方(配線パターン)」を増やしている。
つまり、ストレージを増やすのではなく、組み合わせのバリエーションを爆発的に増やしているんですね。
記憶は“点の数”ではなく“つながり方”で決まる
脳にはニューロン(点)が無数にある、とこれまでの記事で触れてきました。けれど、記憶を増やすときに重要なのは「点の数」ではなく「線の引き方(シナプスの配置)」です。
たとえば、10個の点があったとしても、線の引き方によって模様は何万通りにも変わります。それと同じで、脳は限られた“点”を使いながら、線の引き方(配線パターン)を増やすことで無限に近い記憶を扱っているんです。
つまり、脳の中では、こんな変化が起こっています:
- 新しい線が引かれる
- 既存の線が強化される
- 要らない線が弱まり整理される
- 遠い点同士が新しくつながる
- 以前つながらなかった模様どうしが接続される
この“つながり方の進化”こそが、記憶の増加そのものです。
脳は“圧縮と再利用”をしながら記憶を扱っている
スマホのストレージと違って、脳は“そのまま保存”をしません。
脳がやっているのは、
- 抽象化(特徴ごとにまとめる)
- 圧縮(重複する情報をまとめる)
- 上書き(新しい経験に合わせて修正)
- 再利用(既存の回路を別の記憶でも使う)
という作業です。
たとえば、毎回見た犬の見た目を丸ごと保存してたら、脳は速攻で容量オーバーします。でも実際には、
- 「耳の形」
- 「歩き方」
- 「毛並み」
みたいな要素(点)を抽象化して、それらの“つながり方(線)”を変えるだけで、「いろんな犬の記憶」をまかなえるんです。
まさに“圧縮と再利用の天才”です。
人間の脳と生成AIの共通点:特徴の組み合わせから無限の表現をつくる
生成AIの画像生成でも、モデルは無限の画像を保存しているわけではありません。
持っているのは、
- 膨大な特徴ベクトル(点)
- それらを結ぶ重み(線)
だけです。
それらの組み合わせのパターンが膨大だから、無限のように画像を作れる。
脳もこれとまったく同じで、
限られた神経細胞の中で、線の組み合わせで世界を表現している。
だから、大人になってからも記憶や経験を増やせるんです。
むしろ年齢を重ねるほど、配線パターンの“質”が上がり、判断や理解がスムーズになっていきます。
記憶が増えるのは、脳に新しい回線が敷かれているから
脳が何かを覚えるとき、こんな物理的な変化が起こります:
- シナプス(線)が増える
- シナプスの強さが変わる
- シナプスの位置が変わる
- ニューロン同士のつながりの“距離”が変わる
- ネットワーク全体の配置が微調整される
つまり、「新しい線が一本増える」だけでも、そこから波及してネットワーク全体の模様が変わっていくんです。
だからこそ、物理的なストレージの限界を気にせず、記憶を増やしていける。
脳は、保存ではなく“構造の再編”で勝負しているんです。
限られたストレージで無限の世界を扱う“最強の回路”
脳は、まるで巨大な都市。
建物(点)が無限に増えるわけではないけれど、道路(線)が増えたり分岐したりすると、
- 行ける場所が増える
- 新しいルートができる
- 回遊性が上がる
といった変化が生まれます。
記憶もこれと同じ。
脳は「点の数」より「つながりのルール」を増やしている。
これが、ストレージが増えなくても記憶が増えるカラクリです。
次回は、年齢とともにどのように“重みづけ(判断の精度)”が変化するのか。そして、忘却がなぜ「劣化」ではなく「最適化」なのかに迫ります。
