記憶の真実①:記憶は“ファイル”じゃなかったという話

気づかないうちに、ぼくらは“記憶=どこかに保存されているファイル”だと思い込んでいます。

スマホに写真を保存するみたいに、脳のどこかに「記憶フォルダ」があって、そこにポンと入る――そんなイメージ。ぼくも昔はそう思っていました。

でも実は、脳はそんな仕組みになっていません。むしろ真逆です。

結論だけ先に言うと、記憶は“保存”されていない。その代わり、脳はその場その場で“再構成”しているんです。

この事実を知るだけで、記憶に対する見え方がガラッと変わります。


記憶はファイルじゃない。脳は“点と線の模様”をつくっている

脳の中には、ニューロンという細胞がぎっしり詰まっています。ざっくり言うと、ニューロンは“点”。そして点と点をつなぐ“線”がシナプスです。

記憶の正体は、この点と線が作る**模様(パターン)**なんですね。

つまり、あなたが昨日食べたカレーの記憶も、初恋の思い出も、風邪気味で布団にくるまっていた日の感覚も、全部“模様”なんです。

模様と言っても絵として保存されているわけではなくて、「この点とこの点がこうつながったら、この記憶が立ち上がる」という配線ルールがあるだけ。

脳は、“保存されたデータ”を取り出すんじゃなくて、

配線パターンをもとに、その場で思い出しを“生成”してるということです。


実はこれ、生成AIとすごく似ている

最近流行りの画像生成AIって、完成された写真をそのまま保存しているわけではありません。

「犬っぽさ」「夕焼けっぽさ」「青っぽさ」「柔らかい光」みたいな特徴をたくさん持っていて、そこから画像を“生成”している。

脳も同じように、細かい要素のつながりから思い出を再構成している。

**保存しているのは“完成品”じゃなくて、“特徴の組み合わせ方”**なんですね。

だから、ちょっと間違ったり、少し盛られたり、急に全部つながってフラッシュバックしたりもする。

どれも“生成”してるから起こる現象です。


記憶が曖昧な理由:脳は“再生”するたびに少し書き換える

写真ファイルなら何回開いても同じですが、記憶はそうはいきません。

脳は思い出すたびに、配線を微調整しています。必要な部分は強化され、いらない細部は削れていく。

つまり、思い出すたびに記憶は更新されているんです。

「昔の記憶が曖昧になってる」「記憶違いをしてしまう」のは故障じゃなくて、脳の“仕様”。

むしろそれによって、新しい情報と古い記憶がうまく接続されるようになっているんですね。


記憶の正体を知ることは、実生活にめちゃくちゃ効く

もし記憶が“ファイル”だと思っていると、

  • 覚えられない=才能がない
  • 忘れる=脳が衰えてきた

みたいに考えてしまいがちです。

でも実際は、

  • 覚えられないのは“配線が弱いだけ”
  • 忘れるのは“配線が整理されてるだけ”

という生物として自然なこと。

ここを押さえておくと、勉強法も、覚え方も、忘れ方の受け止め方も変わります。

このシリーズの第1回目では、「記憶はファイルじゃない」という一番大きな誤解をほどきました。

次回は、もう少し深く、**“点(ニューロン)と線(シナプス)の模様としての記憶”**を見ていきます。ここを押さえると、脳と生成AIがほぼ同じ仕組みで世界を理解していることがもっとクリアになります。